あと2日で終わるのか不安です。
本当は既に書き終えていて、一週間くらい前から連続更新、みたいなのをやってみたかったのですけれど、先を見越す能力の欠如によりうまくいきませんでした。
書きにくいところを後に残してとりあえず全体を書こうと思ったものだから、完成したところだけ先に公開するのが難しくなってしまいました。
なんという配分ミス。
とりあえず導入だけ続きにいれておきました。
一部分公開しておくことにより後には引けない状況を作るという試みです。
改めて見てみると書き始めたのが先月の25日でした。ひと月も同じ作品を作り続けていることに愕然とします(その割にはそう長くもない)。
けれど、銀英の二次創作をする前は文章など10数行程度の作品しか書いていなかったことを思えば、これでも多少は成長しているといえなくもないような気がします。
もっと精進したいです。
拍手を押してくださった方、どうもありがとうございます。
イベントに行った時も思ったのですが、同じ作品を好きな人がいる、という事実だけで創作意欲が増すような気がします。
頑張って更新したいと思いますので、よければまた見に来てくださると嬉しいです。
ため息を一つついてフォークを置いたのを、目ざとい兄に見つかった。
「具合でも悪いのか?」
「え?…あっ、ち、ちがうよ!」
どうやら食欲がないように見えたらしい。
いつも通りごはんはおいしいし、体調はどこも悪くない。
ただ僕は、考え事をしていてぼんやりしていただけなのだった。
笑って見せれば納得したのか、兄はそのまま自分の皿へと視線を戻した。
その横顔を盗み見ながら心の中でだけ、もう一つため息をついた。
もうすぐこの人の誕生日なのだけれど、プレゼントが全く思い浮かばない。
それが今の悩みだった。
何を買ったらいいのか分からないでは予算も立てられない。
兄からはお小遣いはもらいすぎだと思うほどもらっているけれど、彼からもらったお金で買ったものを彼にプレゼントするのでは意味が無い。
家の手伝いをすれば手間賃をいくらかもらえるので、基本的に何か物入りの時はそこからお金を出すことにして、兄からもらったお金はそのままこっそり執事に頼んで銀行に預けてもらっている。
一度ついてしまった習慣はなかなか取れなくて、通帳の残高は貯まる一方だ。
そういうわけで何か買うとしたらその手間賃をこつこつ貯めている方から出したいところだ。だけどそちらは高が知れており、兄に相応しいものを買おうと思えば普段以上にお手伝いに励まなくてはならない。
お手伝いをすることは全く嫌なんかじゃない。
血縁でもないのにこの家においてもらっているのだから当然だと思うし、簡単なことでも手伝えばここの家の人は皆笑って喜んでくれるから、何も苦じゃなかった。
だけどプレゼントするからにはそれらは決して兄には知られてはいけないことで、家に居る時間がさほど多くないとはいえ完全にばれないようにするには苦心しなくてはならないだろう。
でも普段のお礼もしたいし、大して上手でもないのに何か手作りのものを渡せるほど子どもではいられなかった。
たまに兄の部屋に入ったときに目にする、昔あげた兄の似顔絵。
今でも目に付くところに置いていてくれるのは嬉しい気持ちもあるけれど、僕は直視することがなかなか出来ないでいた。
当時はまだ幼かったから、そのくらいの年齢の子どもが描くものとしては普通だったかもしれないが……。
人間なのかどうかかろうじて判別出来なくもない程度に塗りたくられた何かにしか見えなかった。
黒と青の色鉛筆の色でようやく兄を模した物なのだろうと、想像力を働かせれば思えなくもないレベルの代物だ。
といって渡した当の本人から「仕舞ってほしい」と申し出るわけにもいかず、兄の部屋に入ってうっかりあの絵が視界に入る度、ぼくはいたたまれない気持ちを味わうことになる。
今描けばあれよりはマシな仕上がりになることは自信を持っていえるのだが、同級生と比べて上手いわけでもないし、何より人を喜ばせられるレベルには至らないだろう。万が一満足の行く仕上がりになったとしても数年経てばまたしても後悔するだろうことは目に見えている。
プレゼントはあげる側の気持ちが大事だとはいえ、そんな精神論で逃げたくはない。
あまり絵やら料理やら、ものづくりの方面には才能がないらしいことは今までの経験から認めざるを得ないので、今回は大人しく何か買おうと思ったのだ。
しかし何を渡したら、このいつも冷静な兄は心から喜んでくれるのだろう。
結局そこで考えがストップしてしまうのだった。
悩んでいても仕方がない。
いざこれにしようと決めた時、懐がそれを許さないようでは意味が無いので、とりあえず先立つものをと、それからの一週間はお手伝いを率先的にしていった。
執事だけには事情を話していたが、その他の使用人たちもなんとなく察したのか、3日後には簡単な仕事をわざと残しておいてくれるようになった。
本来なら子どもなどに任せず自分たちだけでやった方が早くて正確なはずなのに、あえてミュラーに回してくれるその厚意には素直に甘えることにした。
おかげでプレゼント資金用の貯金箱は、思ったよりも早くずしりと重くなっていった。
そうなってくるとますます彼らの厚意を無駄にしないためにも、生半可なものなど渡せないと頭を悩ませることとなった。
もともと兄は物欲の強い方でもない。
必要な家具などに対して金は惜しまないため子どもの目にもわかるような高級品がずらりと並べられていたが、それらは特段彼の好みというわけではない。
どうせ使用するならより良い方を、というだけのことであって、何かにこだわることの極端に少ない男だった。
そんな彼があっと驚くようなもの。気に入ってくれるような何か。
一体何を渡したらいいのだろう。
考えても考えても分からなかった。
学校から帰ってくるとすぐに宿題を終わらせ、夕食の支度から始まり、後片付けやら風呂掃除やら手伝ってから就寝する。
そんな優等生そのものといった生活が続いていた。
今日もようやくベッドの中へ潜り込んだものの、目を閉じればどうしたってあれやこれやと考えてしまう。
時計や宝石といった高価なものは買えそうにないし、子どもでも手の届く範囲の価格帯のそれらが兄に似つかわしいとは思えなかった。
そろそろ寒くなるからセーターなどの防寒具はどうか。デザインも質もいいものを彼は既に何着も持っている。
もとより花を喜ぶような人ではない。
自分がもらって嬉しいものという基本に立ち返っても、菓子だの玩具だのといったものは当然選択肢には入れられなかった。
兄からは形のあるもの、そうでないもの問わずたくさんのものをもらっているのに、何を渡したらいいのか分からないなんて。
最初は喜んでくれるだろう兄を想像しては楽しいともいえたプレゼント選びも、こうも決まらないようだとだんだんと悲しくなってくる。
たらい回しにされたどの家よりも長くこの家に置いてもらっていて、これだけ長い時間をともにしているというのに、兄の好みそうなものが浮かばないのだから。
どうせなら「この子を引きとってよかった」と思ってもらえるような子になりたいのに。
大好きな兄にならなおのこと。
引き取ったはいいもののなんの役にも立たないと思われるのだけは避けたかった。